山賊キャンプ3つのクオリティ
Quality1.安全対策
「信州こども山賊キャンプ」が1993年のスタート以来、みなさまに支持され続けている理由のひとつとして、「安全対策」の質の高さが挙げられます。それは安全が守られてこそキャンプの楽しさと学びがあると考え、そのための工夫と努力を行っています。それらの取り組みのいくつかを紹介いたします。
■食の安全
こどもの健康を守る上で食は最も大切なものです。山賊キャンプでは野菜の約9割を地元泰阜村の契約農家に栽培を委託しています。顔の見える農家がこどもたちのためにと低農薬無農薬にもチャレンジしたりと、地元住民のやる気にもつながっています。
■こどもの本質を理解した安全対策
野外活動の安全対策はスタッフによる外側からの対策と共に、「自己管理」の意識が重要です。こどもが「自分の身は自分で守れる」ようにするために、「伝わる」「理解できる」「行動できる」安全対策を講じています。
●セーフティートーク
- 各活動の前には、必ず「危険なこと、気をつけなければならないこと」をこどもたちに考えてもらい、その方法を伝える時間を作っています。こども自身が考える時間があることで理解度が上がるようにしています。
●手洗い
- 手洗いは野外活動における食中毒予防と共に、感染予防対策の基本です。手に届く場所にアルコールスプレーや手拭き用ペーパータオルを置くこと、手洗い方法をイラストにして手洗い場所に掲示するなどこどもの行動原理に沿って用意しています。
●水分補給
- 熱中症から身を守る重要な手段は水分補給です。山賊キャンプでは「山賊茶」と呼んでウォータージャグを常時用意し、いつでも飲めるようにしています。参加者に対しては「100杯飲もうぜ、山賊茶!」と耳に残るフレーズにすることで、楽しい雰囲気を作りながら、水分補給を進められるようにしています。
●適度な休息
- 非日常のキャンプ体験と共に、1日中太陽の下で遊ぶ活動ではこどもたちも大変な体力を消耗します。そこで各キャンプのディレクターはこどもの体力を考慮して活動時間のマネジメントを行います。また昼食は主催者側で提供し、川のそばや木の下などの日陰で休息をとれるようにしています。
■活動の安全
●スタッフスキル(救急救命法・リバーレスキュースキル)
- 活動の外周からこどもを守るため、世界基準の救命法MFA(メディックファーストエイド)の訓練やレスキュー3といった川の活動スキルを取得し、いざというときの対処法と、「まさか」に備えています。こどもたちが安全に活動できる実際的スキルを身につけています。
●キャンプ場と緊急避難場所
- 山賊キャンプは水道、シャワー、トイレが設置された村営のキャンプ場や公共施設等で開催しています。常に後援団体の泰阜村役場と連携を図り、台風などキャンプ場での安全な活動が困難と判断した際には、200名程度が収容できる泰阜村営「あさぎり館」や山村留学施設等に避難します。
●他団体との連携
- 管轄署である長野県警阿南警察署および泰阜駐在所(共に車で10分)に要請し、キャンプ期間中のキャンプ場周辺パトロールを頻繁に行っていただきます。
また、警察だけでなく、管轄の消防署、医療機関、地元自治会などにも協力の要請をお願いし、地域全体の協力体制によって参加者の安全確保に努力しています。
Quality2.様々な教育賞を受賞した確固たる教育システム
■遊びの中でこどもの主体性を育む
山賊キャンプはプログラムがありません。集まったこどもたちに「なにをしたい?」と問いかけ、参加者全員が集まる「山賊会議」で決められます。こどもたちの「やりたい」という意欲をカタチにし、実行することが主体性の第一歩となります。特に遊びを決めるというこどもたちが一番楽しみにしているもので行っていくので、効果は絶大です。
■必然が仲間との協働を学ぶ場に
毎日の食事作りはグループで行います。メニューは決まっておらず材料だけを渡され、誰が火をおこすか、どんなふうに野菜を切るか、全てこどもたちが決めます。ご飯づくりは仲間と協力しなければできません。「ご飯を食べる」という必然の中で、うまくいかないことがあっても、自ら行動し、協力しあって乗り越えようとする姿勢が身についていきます。
■自分で発見する
こども自身がやりたいことを存分にすることや、自分の身ひとつで山の中で暮らすことで、こども自身の感性が研ぎ澄まされます。自分が感じる、発見するということは教えられて覚えることの何倍も大切なものです。確かな自信や感じた記憶はこどもの一生ものになります。
■社会と繋がる
食器を洗った際の水はどこに行くのか?食べている野菜は誰が作っているのか?自分たちの暮らしが社会とどのようにつながっているのかを知ることはとても重要です。川に直接汚れた水が流れないよう食器をふき取ってから洗ったり、土に流して水を処理したり、お野菜マップを作成し、農家の方の顔写真を貼るなど、こどもたちが社会とのつながりを直感で理解できる仕組みを作っています。
評価されたNPOグリーンウッドの教育方式
Quality3.スタッフの資質
■こどもの本質を理解している
キャンプのクオリティーを考える上で、プログラムやフィールドがどれだけ優れていても、こどもの活動を支援する指導者が良質でなければキャンプの質の向上にはつながりません。主催者スタッフは山村留学、村の学童保育の運営を行っており、ほぼ365日こどもと関わっています。
その活動の中で「こども」の可能性を信じ、各々のこどもの成長に応じて必要なこと、コミュニケーションのあり方を常に考え理解を深めています。
■スキル
現場での経験を支える専門的なトレーニングを積んでいます。例えば、発達心理学、聴く技術、リスクマネジメントの専門家講習。また、よりレベルの高い川での訓練など、常に内面と技術を高めることに努めています。
また、自然体験活動指導者資格、河川安全管理国際資格をはじめ、教諭(学校・幼稚園)・保育士・栄養士・調理師などキャンプ活動に関連する資格を取得しています。
持続可能な活動を目指して。
温室効果ガスの増加による地球規模の気候変動や海洋プラスチックの問題など、人間の暮らしが地球に与える影響が年々大きくなってきています。キャンプは自然を大切にすることで楽しめる活動です。「暮らしから学ぶ」が活動理念の山賊キャンプだからこそ、自然に大きなインパクトを与えないような活動を実施し、さらにこどもたち自身が自分たちの行動がいかに自然に影響を与えるかを気づく場になるようにしています。自然の中で思う存分遊ぶ。そんな当たり前の風景を守ることを大切にして参ります。